キテレツ大百科(エポック社:1990年)



(1枚目:タイトル画面。何故ナリ以外平仮名なんだ。 2枚目:巨大みよちゃん。初見では失禁モノ。 3枚目:オーガズムコロ助。さかさという単語にキたのか。)

巷で有名なこのゲーム、何故有名かといえば名状しがたいおぞましさが理由としか言いようがなく、大百科というより大殺界です。
エポック社と言えば野球盤がまず有名(だからといってゲーム内でベン(犬)に宣伝させるのはどうかと思うが)で、コンシューマのゲームでは
カセットビジョンの開発やアタリの輸入販売等は置いておいて、ドラえもんシリーズや英雄伝説シリーズを開発や移植などしていたのはまた有名でしょう。
同社SFCゲームの効果音は妙に耳に残りやすく、メニューを開いた際のぐゆぅんというSEは10数年たった今でも頭から離れません。

さてキテレツ大百科の話に戻ります。
最初に言っておきますがこのゲームは本当に狂っており、夢の中が舞台であることを加味し意図的に作り出したとしてもやっぱり
狂っているとしか考えられない世界観が数多くの少年少女にトラウマを植え付けました。
かく言う筆者も3面のメトロノーム野郎との対決の際の無音とクリック音のハーモニーや4拍子毎にリンゴが落ちてくる異常な雰囲気などに、
色の悪い月を見た時のような妙なざわざわと気持ち悪い感覚をプレイ中数多く覚えた口であり、つい先ほど終えたレビューの為の再プレイで
不安定な気分が復活しており、取り急ぎ温かいカップラーメンで心を落ち着かせようとしております。
こう書いていても具体的な内容が見えてこないのでそろそろ実際の内容をつらつらと書きたいのですが、徹頭徹尾狂った
グラフィックを始めとする世界観に関してはいちいち書いていても本当にキリが無いので、最後に印象的な部分を書き記そうかと思います。

さて、今更ですがこのゲームは横スクロールアクションで、操作性の悪いマリオといった具合でしょうか。
特徴としては、上を押しながらジャンプすることで重力が逆転し、天井などに張り付ける事(空に落ちると穴に落ちた時同様ダメージ)、
仲間を最大三人まで引き連れる機会があり、キテレツの位置を追尾している筈なのに微妙にずれて一人で投身自殺したり敵に特攻して
ダメージを食らったり(ライフは共通)、クソの役にも立たないお荷物を必死に連れまわす苦労を味わえる事でしょうか。
いや本当にこいつら邪魔。セレクトボタンでキテレツの位置に強制的に戻すというコマンドがなければクリアなぞ出来なかったでしょう。
攻撃手段はジャンプで踏むだけですが判定が微妙におかしくてよくダメージをくらい、イライラします。

ストーリーはとにかく夢の中でキテレツ他4人を救い出しつつ元凶をポアするという内容。詳しくは省きます。
キテレツ大百科(乗れる、入れる)を利用して道具を作り(A連打)目先の問題を解決するあたりは原作通りといったところでしょうか。
正直世界観の奇天烈さが強すぎて、これはキテレツ大百科のゲームなんだという感覚がプレイしているとどんどん薄れていきます。

ではどのようなイカレポンチな世界観か。箇条書き風味に書いてみます。

家の窓からも顔の中心しか見えないほど巨大化したみよちゃんがスクロールで唐突に出てくる。
コロ助がメッセージの途中で絶頂を迎える。
唐突に出てくる意味のないドッペルコロ助。一発踏んで終了。
キテレツ大百科でキテレツ地獄なるものを作成。ライフが0になると飛ばされライフを貸してもらえるが、クリアまでに返さないと真のエンディングが見られない。
2か所ある強制縦スクロール終了後の謎の巨大顔面。
地蔵が大量に並ぶ天国。
エンディングで登場するキャスト(敵キャラ)一覧からわかる名づけのやっつけっぷり(「とーすとばたーず」なんて普通の脳味噌で考えつかんだろ)

など、文字に起こすとそうでもないですが実際プレイ中に見るといちいちインパクトの強いシーンが大量に。
そもそもステージの作りそのものが何やら不安定さを覚えさせるようになっており、これはもうプレイして実感していただくしかありません。
またBGMも中盤以降段々トチ狂っていき、原始時代っぽいステージ(異様にでかいキノコが焼かれており、煙に乗れる)のBGMは
非常に暑苦しく哀愁漂っており昭和の刑事ドラマの様。まさかのEDテーマでの再登場で厳粛な気分にさせられるのでもう最高です。

やはりこのゲームはこうレビューなんぞを読むよりも、実際にプレイして狂ったパーツのハーモニーによるカオスの渦に身を投じていただく方がよいでしょう。
このレビューの存在意義が無くなりますが、元々あって無い様なものなのでそれはそれで。

最後になりますが、散々こきおろしてはきましたが筆者はこのゲームを愛しています。
難易度も中々高く、イライラする場面も多いゲームではありますが、その狂った世界観そのものが逆に魅力に思え、嫌いになれない。
元々筆者は、昨今のゲームのリアル志向はあまり好きでは無く、荒い色数の少ないドットだからこそ表現できる異世界感こそ至高と考えています。
リアルの延長の質感、物理法則は結局うさんくさいリアルに留まります。
壁に向かって延々歩いたりする造形の綺麗なキャラクター等、リアルからの微妙な乖離に結構な違和感を感じてしまうのです。
だったら初めから世界そのものをトンデモなぶっ飛んだものにしてしまえばいい。個性も伸ばしやすい、と筆者は考えます。
そんな考えだからこそ、全力でぶっ飛んだキテレツ大百科は非常に魅力的に映るのです。
ゲームとしての面白さは置いておいても、世界観からその妙な魅力を感じ取る人も数多く、それがカルトな地下的人気を
未だこのゲームが持っている理由となっているのではないでしょうか。